アスリートを目指す人へ!最大の筋トレ効果を得るために徹底したい6大ルール

将来、アスリートになることを目指して、毎日、創意工夫を重ねて練習を続けている方は数多くいらっしゃると思います。

そして、プロフェッショナル、アマチュアを問わず、アスリートを目指すのであれば、競技の技術を磨くことはもちろん、自分の肉体そのものを鍛えることも重要です。

しかし、肉体強化においては、

  • 今行っている筋トレが本当に自分にとって効果的なのか?
  • もし裏目に出たらどうしよう

というような疑問や不安を抱えている方は少なくないでしょう。

私は、自分自身もパワーリフターとして現役を続けながら、さまざまな分野のアスリートのトレーニングをサポートさせて頂いています。その中で、筋トレの正しい知識が不足しているために、効果的とは言えない筋トレをしている方が非常に多いことを知りました。

そうした方に、それぞれの競技ごとに適した筋トレの指導をさせていただくと、ほとんどがパフォーマンスを大きく引き上げることができています。

そこで、ここでは、アスリートを目指す人に必ず知っておいていただきたい本当に効果的な筋トレを行うために、

  1. 筋トレ効果を正しく発揮するための前提知識
  2. 負荷とインターバル時間の選び方
  3. 筋トレフォームに関する考え方
  4. 同一日に筋トレを行うときの種目の順番
  5. 一部位の理想的なトレーニング頻度
  6. ストレッチとウォームアップ

の6大ルールをお伝えしたいと思います。全て私自身が競技経験の中から、確かな実感を得ているものです。

お役に立てていただければ嬉しく思います。

最終更新日:2017年12月23日
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小早川 渉
執筆者

小早川 渉(こばやかわ わたる)

パーソナルトレーナー、パワーリフター。パワーリフティング全日本選手権11度優勝、2017年12月現在スクワット日本記録(327.5kg)の保持者。2017年世界選手権6位はじめ、オリンピックに相当するワールドゲームズに2度出場。トップレベルの現役選手でありな...

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目次

はじめに

当ページでは、肉体的能力の向上について、

  • 筋力
  • 筋肥大
  • 筋持久力

の3つの観点から説明させて頂きます。

これは、競技パフォーマンスに活きる身体的機能を、「筋トレ」の観点から、大雑把に分けたものです。これらの向上が、パワー、バランスなどの全体的な向上に繋がるとお考えください。

ただし、パフォーマンスレベルを上げるためには、もう一つ欠かせない要素があります。

それが「可動性」です。少し難解な表現ですが、可動性とは「柔軟性と筋力発揮の融和と言って、アスリートが意図した姿勢や体位を達成できること」です。当ページは「筋トレ」による身体能力の向上に焦点をおいているため、これについては、最後の「6. ストレッチとウォームアップ」にて簡潔に触れるに留めています。

しかし、パフォーマンスにおいては、可動性は非常に重要で、それによって「しなやかに強く」という状態を実現することができます。そのため、ファンクショナル・トレーニングなども非常に重要です。

ただし、このページで議論の焦点としているのは、基本的に、パワーの向上に主眼を置いたバーベルやマシンを使って行う「筋トレ」です。全体的なパワーの向上によって、競技パフォーマンスの間接的なレベルアップに活かすことができます。

1. 最大の筋トレ効果を得るための前提知識

それでは、ここから6大ルールを一つずつ解説させて頂きます。最初は、筋トレを行う際に、前提として、常に意識しておいて頂きたい知識です。

早速、お伝えしていきたいと思います。

1.1. 【特異性の原則】(1つトレーニングには1つの目的)

1つのトレーニングで得られる効果は1つ

特異性の原則とは「ある1つのトレーニングで得られる強い効果は1つしかない」というものです。

筋トレの目的は3つに分けられます。

  • 筋力の向上
  • 筋肥大
  • 筋持久力の向上

筋持久力系のトレーニングを行えば、筋持久力が高まります。しかし、そのトレーニングでは、筋力やパワー向上の効果を強く期待することはできません。反対に、筋力やパワー系のトレーニングであれば、目的はあくまでも筋力とパワーの向上です。筋持久力の大きな向上は期待してはいけません。

1つのトレーニングで得られる強い効果は1つしかありません。そのため、1つのトレーニングを行う時は、1つの目的をもって行う必要があります。

筋力、筋肥大、筋持久力の全てでトップレベルを実現するのは不可能

「特異性の原則」は、言い換えると、筋力、筋肥大、筋持久力の全てでトップレベルを実現するのは不可能ということです。

100mの選手とマラソン選手をイメージしてみてください。

スプリント(パワー競技)と持久走(持久性競技)では求められる身体機能が正反対です。100mの選手はマラソンで勝つことは不可能ですし、マラソン選手が100mを全力で走ってもトップレベルに並ぶことはありません。つまり、肉体能力のすべてを同時にトップレベルにもっていくことは困難だということですね。

同様に、筋肥大を追求し、素晴らしい体格をもっているボディビルダーが、必ずしもパワー系競技でトップレベルの成績を記録できるわけではありません。

どの能力を伸ばしたいのかを1つに絞って筋トレを行う

筋力を強くしたいにも関わらず、筋肥大トレーニングを追い求めてしまうと、思ったほどのパワーを発揮できなかったり、増えた筋肉が関節可動域を圧迫して、パフォーマンスが低下することもあるでしょう。

だからこそ「何を伸ばしたいのか」を明確に1つに絞る必要があります。

筋力を鍛えたいなら筋力系トレーニング、筋持久力を鍛えたいなら筋持久力系トレーニング、ボディビルダーになりたいなら筋肥大トレーニングというように目的を徹底したトレーニングを行いましょう。

ただし、「はじめに」でお伝えした通り、パフォーマンスの向上という観点で言うと、3つの要素以外にも可動性が重要です。高重量、高強度のトレーニングを行うと、筋肉は過緊張(短縮)の状態となり、本来の筋肉の自然な長さを失ってしまいます。

そのため、身体能力をしっかりと上げていくには、ストレッチやマッサージなどで、その過緊張をとる作業が必要になります。

「鍛えたら緩めろ」

これが使える筋肉を作る条件です。これについては、「6. ストレッチとウォームアップ」で簡潔に触れたいと思います。

また、トレーニングの世界には、「このトレーニングだけで全てが向上する」なんてものはありません。「全て」とは筋力的な能力だけでなく、柔軟性や、心肺機能の向上などの意味を含んでいます。

これらを「全て」をワークアウトに盛り込んでいるのに近いのがクロスフィットですが、クロスフィットという名のごとく一つのトレーニングではなく組み合わせになっているわけです。

1.2. 向上し続けるための3つのステップ

このように、すべてを高いレベルで鍛えられるトレーニングは理論的にありえません。そのため、トレーニング法はたくさんあり、何が良くて、何が悪いということはできません。

重要なのは、それぞれのトレーニングの特徴を知った上で、今の自分には何を鍛える必要があるのか、そのためにどのトレーニングを行うべきか、を考えることです。

目的を明確化したら、あとは以下の3つのステップを繰り返すだけです。

  1. 自分のレベルを知り目標を立てる
    現在の体力的要素を正しく分析して、今何が必要か、「どの筋肉を」「どのくらい」強化しなければいけないか、という目的・目標をなるべく具体的に設定すること。
  2. 目標から逆算してトレーニングメニューを作る
    1番目に掲げた目的を達成するために最適なトレーニングは何かを考え、それを行うこと。そのトレーニングのメカニズムや効果を、ある程度説明できる様にすること。感覚的によさそうだからとやるのはNG。
  3. 効果を測定しPDCAを回す
    トレーニングの効果測定と評価を適切に行い、順調に伸びているのか、改善点はないか、次のステップとして何を取り入ればいいか、などを考えること。

目標地点にたどり着くまで、ただ地道に、これを続けるのです。

私はパワーリフティング競技を長く続けていますが、常に、この3つのステップを念頭に、「パワー」を目的としたトレーニングを行っています(「パワーとは何か」については、「1.3. 正しい筋トレ効果の測定方法(パワーカーブ)」でお伝えします)。

だからこそ、トップレベルでいられ、さらに上を目指せるという手応えを感じることができています。

時には、この3つのステップを経ずに、才能だけでトップレベルまで上がってくる選手もいます。

しかし、ほとんどの場合、才能だけで上がってきた選手は活躍が長続きすることはないようです。知識や理論の積み重ねがありませんので、スランプなど不測の事態に陥った時に混乱し、正しい対処ができないところに原因があると思います。

「自分のレベルを知る」ことが最も重要

さて、この3つのステップの中で、まず重要なのは「自分のレベルを知る」ということです。自分のパワーのレベルを測るとき、多くの方は「○○○kgが上がった!」と重量だけに着目してしまいます。

しかし、それは厳密には良い方法とは言えません。

今回、その重さが上がったのは、たまたま調子が良かっただけかもしれません。次にやってみたら、「前回は上がったのに今回は上がらない。パワーが落ちてしまったのではないだろうか。」と混乱してしまうかもしれません。

これは「筋力」のみに意識が言っているために起こることです。

どのような競技であれ、良いパフォーマンスを発揮するために必要なのは、筋力ではなく「パワー」です。筋力だけで自分のレベルを計測すると、例えば、「筋肉をつけたのに競技パフォーマンスが落ちる」という事態になりかねません。

なぜなら、パワーは「力 × 速度」だからです。

「力」が2倍になっても、「速度」が1/3倍になれば、結局、それらを掛けても2/3にしかならず、元々のパワーの66%しか発揮できないことになりますよね。

私が競技者をしているパワーリフティングのような「単純に重いものを持ち上げる」という純粋なパワー系競技でも「力」だけにこだわって自分のレベルを計測することはしません。あくまでも「パワー」を計測します。

1.3. 正しい筋トレ効果の測定方法(パワーカーブ)

それでは、「パワー」を計測するには、何を指標とすればいいのでしょうか?

これはパワー(力×速度の関係=「パワーカーブ」)から求めます。詳しく解説していきます。

力 – 速度カーブ(パワーカーブ)

以下の図をご覧ください。

画像:SCIENCE FOR SPORT

縦軸が力(Force)で横軸が速度(Velocity)です。力と速度を掛けたものがパワーです。

このグラフのように、力と速度は反比例の関係にあります。つまり、より大きな力を発揮するとき、速度はゆっくりになります。一方で、より高い速度を発揮するとき、力は小さくなります。

例えば、床から100kgの物体を持ち上げるとき、持ち上げる動作はゆっくりになりますね。一方で、1kgのものを持ち上げるときは、スッと上げることができます。このことから、「力」と「速度」は反比例することがイメージできるでしょう。

パワーカーブがどれだけ外に広がったかを見ることが重要

筋トレ効果の測定は、このカーブがどう変わったかを見ます。下図をご覧ください。

画像:SCIENCE FOR SPORT

これを見ていただくと、トレーニングによって、パワーカーブが、以前より外側に広がっていることが分かると思います。

これは、あらゆる領域でパワーを出せる範囲が広がっていることを示します。私は、このようにパワーカーブの特徴がどう変わったかという見方をします。その上で、ピークパワー(「力×速度」が最大となる場所)がどう変わったか、パワーを出せる範囲がどのぐらい広がったかといったことを分析していきます。

パワーカーブを広げるには高重量を扱うトレーニングが重要

このように「○○kg上がった」ではなく、「パワーカーブがどう変わったか」を見ないと、トレーニング効果を正しく評価することはできません。「パフォーマンスが上がった」と言えるのは、最大筋力が上がった時ではなく発揮できるパワーの領域が大きくなったときです。

重い負荷で筋力向上トレーニングをした場合は、パワーカーブを外側に広げる効果を得られます。

一方で、最大筋力の30%程度の軽い負荷を使って素早い動きでトレーニングをすれば、最大筋力はあまり伸びていないのに30%でのピークパワーだけが上がるという結果になります。マラソンのように、一定のパワーを発揮する持続力が重要となる持久性スポーツでは、これは有効でしょう。

しかし、色々な状況で大きなパワーを発揮できる筋肉を作りたいという場合には、30%のポイントだけピークが上がってもあまり意味はありません。

だからこそ、重い負荷を使って、まず筋力を高め、大きなパワーを発揮できるレンジを広くすることが重要になります。その後で、競技に特有の力の領域、例えば、50-80%の範囲の力を使う競技であれば、その範囲内での動作の正確性や力の出し方を練習することで「速度」を上げ、競技に必要なパワーを向上させることが理想的だといえます。

2. 最大の筋トレ効果を得るための負荷とインターバル

それでは、ここから最大の筋トレ効果を得るために必須のノウハウについて解説していきたいと思います。

まずは筋トレの理想的な重量や負荷についてです。

最大の筋トレ効果を得るために、適切な重量を選び、適切な負荷をかけることは非常に重要です。なぜなら「1.1. 特異性の原則」でお伝えしたように、扱う重量、負荷によって、

  • 筋力
  • 筋肥大
  • 筋持久力

のどれが向上するかが変わってくるからです。

これを理解していないと、例えば、「筋力を向上させたいのに、筋持久力を伸ばすトレーニングをしてしまう」「筋肥大させたいのに、筋力を伸ばすトレーニングをしてしまう」というように、思うような効果を得られないということが頻発してしまいます。

それでは、目標を達成することはできませんし、モチベーションも保てず、挫折してしまいます。「自分には向いていなかったんだ」と諦めてしまいます。

本当は達成できる目標なのに、そうなってしまっては非常にもったいないです。

そこで、ここでは、そのような失敗をなくすために、以下の4つについてお伝えします。

  • 適切な負荷強度(重量と反復回数)とセット数
  • 重量とセット間インターバル
  • 扱う重量に対する考え方
  • ピリオダイゼーション(筋力向上期、筋肥大期など期別にトレーニングの目的を分けること)

それでは始めましょう。

2.1. 適切な負荷強度(重量と反復回数)とセット数

ここでは、

  • 目的別の負荷強度(重量と反復回数)
  • 最大筋力(1RM筋力)の測定方法

をお伝えします。

目的ごとに扱うべき重量と反復回数は異なる

まず、以下の表をご覧ください。

負荷強度(%1RM)RM(反復回数)主たる効果
1001筋力
952
933
904
875筋肥大
856
808
779
7510-12
7012-15
6715-18
6518-20筋持久力
6020-25
5030-

これはフレック教授とクラーマー教授によって、1987年に発表された負荷強度とトレーニング効果を示す指標で、現在でも私たちトレーニング現場の業界では世界的に活用されているものです。

「負荷強度」は「%1RM」で表されます。例えば、「1RM筋力」は、「正しいフォームでやっと1回持ち上げられる最大の重さ」のことです。そして「80%1RM」は、「1RM筋力の80%の重さ」を意味します。

競技ごとに有効なトレーニングを判断する目安

パワー系スポーツの選手の場合

もし、あなたがパワー系スポーツの選手で、パフォーマンスのために最大筋力を向上させたいのであれば、「1RM筋力の重さで1回の挙上」から「1RM筋力の90%の重さで4回の挙上」の範囲でトレーニングを行いましょう。パワー系スポーツ以外でも、全体的にパワー不足を感じているなら、このトレーニングを行って、パワーカーブを外側に広げることを意識すると良いでしょう。

ボディビル系スポーツの選手の場合

ボディビル系の選手を目指すのであれば、「1RM筋力の87%の重さで5回の挙上」から「1RM筋力の67%の重さで15-18回」の範囲でトレーニングを行いましょう。

持久力系スポーツの選手の場合

マラソンなどの持久力系スポーツの選手で、心肺機能には余裕があるのに、肉体的疲労でパフォーマンスが伸びない場合は、「1RM筋力の65%の重さで18-20回の挙上」より下の範囲のトレーニングを行いましょう。しかし、筋持久力トレーニングだけでは、記録が伸びなくなった場合は、最大筋力を向上させるトレーニングを行って、パワーカーブを外側に広げることにトライしましょう。

なお筋力と筋肥大の境界線に近い負荷強度を選べば、両方の効果を期待できますが、主たる効果は表の通りです。つまり、あくまでも筋肥大を主目的として、副次的に筋力を鍛えたいなら、「1RM筋力の87%の重さで5回の挙上」を選択するということです。

ただし、その際も「特異性の原則」は絶対に忘れないようにしてください。

この原則があるため、筋力、筋肥大、筋持久力の全てを同時にトップレベルに引き上げるのは不可能です。自分にとって、この3つのうち、どれが最も重要かを見極めてトレーニングを行うことが不可欠です。

プラトーに陥ったときはピリオダイゼーションを行う

ただし、一つのトレーニングのみを行ない、一定のレベル以上になると「プラトー」という停滞期が訪れます。

こうした時は、基本的に筋肥大を促して、上乗せできる身体機能の容量の底上げを図り、その後に、またそれぞれの目的ごとのトレーニングを行うというステップを挟む場合が多いです。これについては「2.3.ピリオダイゼーション」で後述します。

「1RM筋力」を測定する方法

トレーニング経験が浅い場合は「やっと1回持ち上げられる重さ」は分からないですし、もし一人でトレーニングをしているなら、スクワットやベンチプレスで「やっと1回持ち上げられる重さ」に一人で挑戦するのは、心理的に恐怖をともなうと思います。

また、1RMの計測はあくまでも「正しいフォーム」が重要なのですが、記録をのばそうと頑張りすぎると、フォームが崩れてめちゃくちゃになってしまい、最悪の場合、ケガをしてしまう可能性もあります。

そこで初心者の方は「RM強度」というものを指標にすることをおすすめします。RM強度とは「最大反復回数」のことで、「ある重量を、何回反復して持ち上げられるか?」で、1RM筋力を測定する方法です。

以下の表をご覧ください。

% 1RM反復回数
100%1回
95%2回
93%3回
90%4回
87%5回
85%6回
80%8回
77%9回
75%10回
70%12回
67%15回
65%18回
60%20回
60%以下20回以上

これも、トレーニング業界で効果測定のために昔から広く一般的に用いられているものです。

私がパーソナルトレーニングの指導をさせていただく際は、いつも、この表を使って、お客様の1RM筋力を測定、記録しています。もちろん、私個人の測定の際にも活用しています。

例えば、ベンチカールでもスクワットでも何でも良いので、40kgの重さを、やっと8回あげられたとします。その場合、「1RM筋力」は、40kg÷0.8=50kgになります。これで、40kgを10回あげられるようになったら、次に42.5kgにあげて、8回あげられたとします。

その場合、「1RM筋力」は、42.5kg÷0.8=53.125kgになったということです。

効果的なセット数の基準は3セット

トレーニングのセット数についてですが、ウエストスコットランド大学のラルストン教授らの最新の研究によると、初心者や中級者は2-3セット、上級者は3-4セットが効果的であることが示唆されています(※1)

私も経験上、「1RM筋力の80%で8回」を3セット、「1RM筋力の90%で4回」を3セットなどのように、「3セット」を基本としてトレーニング指導をさせて頂いています。

ただし、例外的に、初心者の場合は、「正しいフォーム」を身につけることを最優先にして、軽い重量のセットを何度も重ねて頂いています。

2.2. セット間のインターバルについて

ほとんどの方にとって筋トレの主な目的は筋力増強と筋肥大だと思います。

2000年代までは、筋力増強を目的とした場合はインターバル(セット間休憩の時間)を長く取り、筋肥大を目的とした場合は短く取るべきという考え方が一般的でした。

これは、インターバルが短い方が成長ホルモンの分泌が多く、より強い筋肥大が促されるということが根拠とされていました。しかし、成長ホルモンが筋肉の成長の大きな要因であるという考え方は、現在、科学界でも主流を外れています(※2)(テストステロンは除く)。

例えば、2010年に行われた研究があります。

この研究では、トレーニング経験者に、ベンチプレスとレッグプレスを行わせ、インターバルが1分のグループ、3分のグループ、5分のグループに分けて16週間の記録を調査したものがあります。その結果、筋力が最も伸びたのは、インターバルが5分のグループで、1分のグループは最も低い結果しか得られませんでした(※3)

トレーニングの現場では、この研究結果は、非常に的を射ています。

「2.1. 適切な負荷強度とセット数」で、筋力増強や筋肥大の目的ごとに扱うべき重量と反復回数の表を掲載しましたが、そこから、筋力や筋肥大を起こすには、最低限の重量を保つ必要があることがお分かり頂けると思います。

そもそも、セット数をこなす理由は、筋肉に、「より強い刺激」を与えるためです。

そして高重量でフルセットをこなすには、現実問題として、インターバルを十分に取らなければ、次のセットに臨むために必要なだけ、筋肉や神経系を回復させることができないのです。

そうしたことから、私たちのようなリフターや、その他の競技者レベルのアスリートにとって、たった1分のインターバルで3セットをフルにこなせるとしたら、それは本来設定すべき重量よりも低い重量でトレーニングをしてしまっているということを意味します。

それでは、筋肉に十分な負荷をかけられないので、筋力も筋肥大も向上しません。

ただし、全てのセット間で5分のインターバルを取るとすると、一つの種目で3セットを終えるのに約20分もかかってしまいます。そのため、インターバルは3分を基準として、スクワットやデッドリフトのような大筋群トレーニングでは気持ち長めにし、小筋群のトレーニングでは気持ち短めにするというのが実用的です。

2.3. ピリオダイゼーションについて

さて、ここまでで負荷のかけ方についての原則をお伝えしてきました。しかし、実は、例えば、パワーを求める選手でも、持久力的なトレーニングを行う時期もあります。逆もしかりです。

これは「ピリオダイゼーション」といって、

  • 休息期
  • 準備期
  • 筋肥大期
  • 筋力向上期
  • 試合期

など時期によって行うことを変えて、総合的に身体能力の向上を測ることを目的としています。

なぜなら、筋トレがあるレベルに到達すると「プラトー」といって停滞期が訪れます。身体的機能については、「筋力は筋断面積に比例する」という生理学的な基礎原則があります。つまり、プラトーに陥った場合は、筋肥大を起こして、筋断面積を増やすことが突破口となります。

筋肥大によって筋断面積が増加すると、そこに上乗せできる筋力が増加します。そのため、こうした場合は、筋力系アスリートの場合でも、筋肥大のトレーニングに立ち戻ります。

そのため、最終的には、パワー系競技であれ、持久力系競技であれ、

  • 筋力向上トレーニング
  • 筋肥大トレーニング
  • 筋持久力トレーニング

の全てをこなす必要が出てきます。簡潔にお伝えすると、プラトーに陥った際は、「筋肥大のゾーンこそ、全ての始まり、基礎になる」とご理解ください。

2.4. 扱う重量に対する考え方

以上の理由から、私がお客様に指導させていただく場合のような、基本的な筋力トレーニングの場合、「やっと1回あげられる重さの80%」の重さを使った筋肥大がベースとなります。

しかし、やってみると分かるのですが、これを8回行うというのは、実は非常に辛いものです。しかも3セット行うわけですから、結構な精神力が必要になります。

私たちは人間ですから、どうしても「できるだけ楽をして体を強くしていきたい」と望んでしまいます。また、重いものを持つとケガをするリスクが高くなるという不安もあります。しかし、残念ながら、私は、これまでの経験から「楽をして強くなる」というのは実現不可能だと考えています。

筋力を強化したり、スポーツ中に大きなパワーを発揮したりすることが目的である場合は、やはり負荷強度の低いトレーニングをしても意味がありません。強くなるには、それにふさわしい刺激が必要であり、その苦しさを乗り越えた先に、パワーや競技パフォーマンスが上がるという喜びが待っています。

No Pain, No Gainです。

ただし、対象としている筋肉が疲弊して「きつい」「しんどい」と感じるのはいいのですが、それに加えて心臓や呼吸器などに過度の負担がかかり、「身体中が辛くて耐えられない」という状態になってしまったら、それは決してよいトレーニングではありません。

目的としないところにまで余計なストレスがかかるのは、体全体にとってもプラスではありませんし、目的とする筋肉を鍛える効果も半減してしまいます。また、フォームが乱れたり関節などに不要な負荷がかかったりして、ケガにつながる危険性もあります。

さらに精神的なストレスも大きくなり、結果としてトレーニングが長続きしないということにもなってしまいます。その日の体力や気力の充実度をしっかりと確かめながら、その上で、無理のない範囲で、自分にとっての高重量にチャレンジしていきましょう。

3. 最大の筋トレ効果を得るためのフォーム

ここでは、最大の筋トレ効果を得るための正しいフォームに関するノウハウをお伝えしていきます。

ただし、スクワットやデッドリフト、ベンチプレスなどのバーベル種目での「正しいフォーム」には実は絶対的な正解はありません。例えば、スクワットであれば、股関節から膝までの長さ、膝から足までの長さなどは、人によって大きく異なります。デッドリフトでも、肩から手までの長さや上半身の長さは様々です。

こうした理由のため、人によって正しいフォームは違います。

つまり、本当に正しいフォームを身につけたい場合 – もちろんそうすることがベストなのですが – 経験あるトレーナーの目が必要不可欠です。そのため、ここではフォームに関する詳細な解説は避け、あらゆる人に共通する項目を共有することに留めたいと思います。

それは、

  • バーベルを下ろす動作こそ丁寧に行うこと。
  • 正しいフォームを身につけるためにも全面性の原則を理解すること。

の二つです。

3.1. バーベルを下ろす動作こそ丁寧に行う

バーベルをあげるときは、筋肉は収縮しながら力を発揮します。一方、バーベルを一定の速度で下ろすとき、筋は伸張しながら力を発揮します。ここではシンプルに、前者を「上げる動作」、後者を「下ろす動作」と言いたいと思います。

「下ろす動作」の方が筋トレ効果が高いことが示唆されている

トレーニングとしてみたとき、この二つの動作による筋トレ効果に違いはあるのでしょうか。この分野に明確な解答はまだ得られていないようなのですが、東京大学大学院石井研究室が行った実験があります。

同じ人の左右の腕に、プリーチャーベンチカールというトレーニングをさせました。ただし、例えば右腕はダンベルを「上げる動作」のみ、左腕はダンベルを「下ろす動作」のみ行いました。結果「下ろす動作」を行った腕のほうが、トレーニングのあとで筋断面や筋力が増える割合が大きいことがわかりました。

つまり、「上げる動作」よりも「下ろす動作」の方がトレーニング効果が大きいということになります。

石井教授は著書の中で、「バーベルの上げ下げを交互に行う通常のトレーニングでは、全体の効果のうち40%程度が『上げる動作』に、60%が『下ろす動作』によるものと考えることができます」と書かれています(※4)

これは私の経験則にもあてはまっています。

丁寧に「下げる」ことがフォームの安定につながる

初心者から中級者トレーニーの多くの方は、「上げたい」という気持ちが強過ぎて、焦ってしまい、下ろす動作を急いでしまいます。そして、結果的に、体に無駄な力みが生まれて、フォームが崩れ、上がらなくなってしまいます。

上級者は、まず下ろす動作を丁寧に行うように心がけています。どれだけ辛くても、冷静に、丁寧に下ろすと、フォームに安定性が生まれて、結果、早く下ろした時よりも、高重量を扱えるようになります。

ぜひ、日頃のトレーニングから、2秒ほどかけて丁寧にゆっくり下ろし、1秒ほどで上げるということを意識してみてください。これは、最大の筋トレ効果を得るためにも重要ですが、何よりも正しいフォームをしっかり身につけるという観点からも非常に重要だと実感しています。

3.2. 全面性の原則:全身をバランスよく鍛える

続いて、正しいフォームを身につけるために重要な原則があります。

それは「全面性の原則」です。これは簡単にいうと、「全身をバランスよく鍛えることが重要」というものなのですが、私は、正しいフォーム形成において、このことを実感しています。

筋肉が力を発揮している時は非常に多くの筋群が同時に働く

私たちの筋肉は、実は、想像を絶するほどの力発揮能力をもっています。

仮に、身体中の筋が同時に最大筋力を発揮すると、いたるところで筋が切れたり、骨が折れたりしても不思議ではありません。ハイレベルの腕相撲だったり、オリンピックのウェイトリフティングだったりで、ときどき競技中に突然、骨折が起きるのもこのためです。

そして、ある特定の筋肉が力を発揮している時には、実は、非常に多くの筋肉が共同して働いています。共同筋や関節を取り巻く小筋群、ときには拮抗筋も同時に活動して、ストレスが一点に集中するのを防いでいると考えられています。

例えば、膝の筋肉がが最大筋力を発揮すると、膝関節には500kgを超える力学的ストレスがかかります。このようなストレスで膝が壊れない様にするためには、拮抗筋をはじめとしたいくつかの筋群を動員して、動作中に膝関節を安定させる必要があると考えられています。

正しいフォームで高重量を扱い記録を伸ばすには拮抗筋も鍛える

こうしたことから、私は正しいフォームで高重量を扱うために、拮抗筋を強く意識しています。

例えば、主として脊柱起立筋を鍛えるデッドリフトという種目があります。デッドリフトで扱う重量を上げた時に、フォームが大きく崩れていて、力が正しく発揮されていないようなら、拮抗筋である腹筋を鍛えます。実際に、拮抗筋を鍛えると、デッドリフト時の姿勢の安定性が増して、記録を伸びたという経験が何度もあるのです。

そのため、例えば、ベンチプレスで記録が伸びなくなったり、高重量によってフォームの崩れを感じているなら、大胸筋の拮抗筋である広背筋を鍛えることで、フォームが強制されて、記録の向上を狙うことができます。

つまり、正しいフォームを身につけるには、全面性の原則にのっとって「拮抗筋をバランスよくトレーニングすること」が重要なのですね。私の経験上、この効果は絶大ですので、ぜひ試してみてください。

実践される時は、Wikipediaの『拮抗筋』のページで、対象となる筋肉が示されていますので、参考にすると良いでしょう。

4. 最大の筋トレ効果を得るための種目の順番

続いて、同じ日に複数の種目のトレーニングを行う時に知っておきたい、トレーニングの順番についてお伝えします。

どの種目から行うかは非常に重要で、これを間違えてしまうと、本来得られるべきトレーニング効果よりも低い水準の効果しか得られなくなってしまいます。せっかくトレーニングを行うのなら、その日得られる最大限の効果を得たいですよね。

その積み重ねで、やがて、大きな記録につながっていきます。そのために、知っておいて頂きたいことは以下の3つです。

  • プライオリティの原則
  • トレーニング種目の分類

それぞれ解説させて頂きます。

4.1. プライオリティの原則

ボディビルの世界で経験則的に生まれた「プライオリティの原則」というものがあります。

現在では全米ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)やアメリカスポーツ医療学会(ACSM)もトレーニングプログラムの指針の一つとしてこれを採用しています。最も基本的な考え方は、「疲労が蓄積していないうちに、最も重要な部分のトレーニングを行う」ということです。

例えば、前腕の筋力に特に問題があって、これを強化することが最優先課題であれば、リストカールから始めるということになります。

しかし、前腕という小さい筋肉を重点的に鍛える必要性が生まれるようなケースはあまりありません。そのため、プライオリティの原則は、一般的には、「大きな筋群を使う種目から始めて、小さな筋群の種目で終わること」となります。

この判断を正確に行うためには、トレーニング種目の分類を知っておくことが重要です。

4.2. トレーニング種目の分類

トレーニング種目の分類には、

  • 大きな筋群の種目
  • 小さな筋群の種目

という分類の他に、

  • 複数の関節を協調して使う動作(複合関節動作、以下「SE」)
  • 単一の関節を使う動作(単関節動作、以下「BPE」)

による種目という分け方もあります。

スクワット、デッドリフト、ベンチプレスはSEで、レッグエクステンション、バタフライなどはBPEです。したがって、プライオリティの原則に従うと

  1. 大筋群のSE
  2. 大筋群のBPE
  3. 小筋群のBPE

の順にトレーニングを行うと良いということになります。

これに関して、ニューヨークのイサカ大学スフォルツォ教授らが、定量的な実験結果を発表しました。

彼らはSE→BPEの順にトレーニングを行う場合、(スクワット、レッグエクステンション、レッグカール、ベンチプレス、ミリタリープレス、トライセプスプレスダウンの順)と、その全く逆の順(BPE→SE)でトレーニングを行った場合の様々な効果について検討しました。

例えば、ベンチプレス(4セット)の筋力発揮(回数×負荷)を見ると、SE→BPEの場合に比べ、BPE→SEの場合では4セットの合計で半分以下になってしまいます。1セット目だけを見ると、30%以下にまで低下するようです。しかも、疲労曲線の分析から、ベンチプレスでの筋力発揮は主に上腕三頭筋の疲労度を反映していることが示唆されています(※5)

これではベンチプレスはまったくトレーニングにならないことになります。

このことからも、同じ日に複数の種目をこなす場合は、「プライオリティの原則」に従って、順番を決めると良いでしょう。

5. 最大の筋トレ効果を得るためのトレーニング頻度

ここでは、トレーニング頻度、つまり「一つの部位を週に何回トレーニングするべきか」についてお話します。

トレーニング頻度については、毎日行うべきという人や、1週間に一度で十分だという人など、人によって意見が異なっています。しかし、これに関しては、一定の根拠が示されていますので、ここで、

  • 短期的視点でのトレーニング頻度
  • 長期的視点でのトレーニング頻度

の二つに分けてご紹介します。

5.1. 短期的視点では最適なトレーニング頻度は断定できない

ユヴァスキュラ大学のハッキネン氏が、トレーニング経験のない平均年齢30才の女性に10回挙げられる重量のレッグプレスをを5セット行わせ、膝の筋力にどのような影響があるかを計測しました。

結果、トレーニング直後では筋力は平均約80%に低下していましたが、1時間後にはすでに約90%に、2日後に約95%にまで回復していました(※6)

2日目以降、測定は行なわれていませんが、4日後には100%に戻るか、超回復が起きて100%以上になっていると想定できます。この実験だけを見れば、脚筋群のトレーニング頻度は中3日、およそ週2回程度が適切ということになります。

しかし、次のトレーニングまでに休むべき日数はトレーニングの内容によって大きく異なるようです。

東京大学大学院の生命環境科学系研究室の石井教授による実験では、被験者は、肘の屈筋に最大筋力を発揮させるようなエキセントリックトレーニングを8回×2セット行いました。

結果、1日後に筋力が約65%にまで低下し、その後、筋肉痛をともなう疲労が続き、10日後になっても筋力は約90%までにしか回復しませんでした(※7)

さらに、横浜都市大学の野坂氏らの研究によれば、上の同様のトレーニングの後、さらに長期にわたって筋力を測定すると、約1ヶ月後になってやっとわずかな超回復が見られたとのことです(※8)

これから見れば、負荷強度の高い重量で「下ろす動作」を多用するようなトレーニングでは、その頻度を週2回より低く設定しなければならないことになります。

しかし、話は、そう単純ではないようです。

さらに、野坂氏らのその後の報告によれば、高強度のエキセントリックトレーニング(「下ろす動作」を多用するトレーニング)を行う数日前に、あらかじめごく軽いエキセントリックトレーニングを行い、筋肉を鳴らしておくと、高強度のトレーニングごの疲労回復速度が著しく高くなるとのことです(※9)

つまり、短期的には、「これ!」と言える最適頻度は断言できないということになります。

5.2. 長期的視点では同一部位のトレーニングは週2回が最適

長期的視点でのトレーニング頻度に関して、フロリダ大学のポロック教授らのグループが、腹筋群や脊柱起立筋などの体感の筋群について、さまざまな頻度で3ヶ月間トレーニングを行なった場合の筋力増加を調べています。

彼らの一連の研究をまとめると、週2回が最も効果が大きく、その効果を100%とすると、週3回では約70%、週1回では約35%、2週に1回では約5%の効果があることになります(※10)

この研究では、被験者がトレーニング未経験者であることや、体幹の筋群に対象が絞られている点を考慮する必要があります。

しかし、他の筋群についても、少なくとも急激な効果を必要とせず、マイペースで着実に効果を上げればよい、1週間に2回トレーニングする暇がないなどの場合には、1回/週の頻度でも良いのではないかと思われます。

6. 最大の筋トレ効果を得るためのストレッチとウォームアップ

続いて、トレーニング前のストレッチやウォームアップについてお伝えします。

これらは、体をケアして、長くトレーニングを続けるためにも必要不可欠なものです。ただし、必要な知識なしに、やみくもに行ってしまうと、トレーニング効果にマイナスになってしまうことがあります。

そのようなことがないように、

  • 筋トレ直前のストレッチ
  • 筋トレ直前のウォームアップ

についてお伝えします。

6.1. 筋トレ直前のストレッチは筋力を低下させる

ストレッチには、

  • スタティック・ストレッチ
  • バリスティック・ストレッチ
  • ダイナミック・ストレッチ

など様々なものがありますが、ここでは、最も一般的である「スタティック・ストレッチ」を扱います。

これは、立位体前屈などのように、「体を静止させ、反動を使わずに関節の可動域を段階的に増していき、無理のない程度に筋肉が伸ばされた状態をしばらく保持し(15-60秒間)するストレッチ方法」です。

学校の体育や、部活の練習前にどこででも行われているストレッチといえば、お分かりだと思います。

長時間同じ姿勢でいると筋の緊張が徐々に高まり、関節可動域が低下していきます。こうした状態では、なめらかな動きができなかったり、急に関節を大きく動かすことで障害が発生したりしますので、ストレッチによって筋肉の緊張を取り除くことは当然重要と考えられます。

しかし、最近、3-10分のスタティック・ストレッチの前後で筋力を測定すると、あらゆる面で筋力が低下してしまうことが示されています(※11,12,13)。いずれも低下してしまうことが示されました。筋力低下は最大で約30%にも達し、その効果はストレッチ終了後45分間ほど続いてしまうようです。

それでは筋トレ前には、ウォームアップは行わない方が良いのでしょうか?決してそんなことはありません。次からお話させて頂きます。

6.2. 筋トレ10分前はアクティブウォームアップを行う

筋トレ前に、ジャンプやジョギングなどのアクティブウォームアップを10分ほど行うと、関節可動域が拡がり、筋力が低下せず、筋力発揮能力が向上することが示されています(14)

こうした効果には、筋活動と筋の伸張(ストレッチ)が組みあわされていること、筋温が上昇すること、などの要因が関連しているものと考えられています。

運動やトレーニングにスタティックストレッチをどの様に取り入れていくかは、どの様にしたら良いのか、具体的な答えはまだありませんが、現時点では、「最大パフォーマンスを発揮する直前にはスタティックストレッチは行わない」と言えます。

6.3. ストレッチは日頃から行う

しかし、ストレッチなどの柔軟性トレーニングは不要というわけではありません。特に、競技パフォーマンスを追求するアスリートにとっては必要不可欠といえます。

なぜなら、鍛えた筋肉を、実際の競技に活かすには、「可動性」を確保しておく必要があるからです。

高重量、高強度のトレーニングを行うと、筋肉は過緊張状態になり、可動域の中でパワーを発揮できるレンジが狭くなってしまいます。このことから、鍛えた筋肉を、うまく競技に活かすことができずに、パフォーマンスを下げてしまう場合もあります。

これを防ぐには、やはりストレッチやマッサージによる可動性の確保が重要です。

「鍛えた筋肉は緩めろ」を徹底してください。

私は、筋トレ直前のスタティックストレッチは行いませんが、その部位のトレーニングを行う二日前から、その部位のストレッチを行ったり、マッサージしたりなど、しっかりと準備を行ってから臨むように心がけています。

感覚としては、トレーニング前から数日かけて、しっかりと筋肉の錆びを落とすというイメージです。また、筋トレ直後は、負荷をかけて硬くなった筋肉を伸ばすことを目的として、しっかりとその日トレーニングを行った部位をストレッチするようにしています。

これも、筋肉の痛みがある場合などは、マッサージも取り入れます。

これは経験則からですが、このように、日頃から筋肉を伸ばしたり、ほぐしたりするようになってから、大きな怪我もせずに安定的にパフォーマンスを伸ばすことができるようになりました。

まとめ

ここまでご覧いただきありがとうございます。最後に、重要なポイントだけをまとめさせて頂きます。

  • 筋力、筋肥大、筋持久力の中で目的を一つに絞る。
  • 筋トレの効果はパワーカーブが広がったかどうかで測定する。
  • 目的にあった重量と反復回数を選択する。セット数は3セットを基本とする。
  • セット間は3分以上のインターバルをとる。
  • 「下げる動作」こそ丁寧に行う。
  • 拮抗筋もバランス良く鍛えることによって記録が伸びる。
  • プライオリティの原則にしたがって同一日に行う筋トレの順番を決める。
  • 同一部位のトレーニングは週2回を原則とする。
  • 筋トレ前はストレッチではなくアクティブ・ウォームアップを行う。
  • 「鍛えたら緩めろ」を徹底する。

これらを取り入れて頂ければ、きっと多くの方が、今まで以上のパフォーマンスを発揮できるようになると自負しています。

あなたの今後の競技活動の助けとなれば幸いです。

参考文献・資料

参考文献

  1. 石井直方(2007)『究極のトレーニング:最新スポーツ生理学と効率的カラダづくり』講談社.
  2. 石井直方(2017)『筋肉の科学』ベースボール・マガジン社.

参考資料

  1. Ralston GW, et al. The Effect of Weekly Set Volume on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med. 2017
  2. 『究極のトレーニング』.
  3. De Salles BF et al, Strength increaases in upper and lower body are larger with longer inter-set rest intervals in trained men. J Sci Med Sport. 2010.
  4. 『究極のトレーニング』PP50-51.
  5. Sforzo GA, et al. Manipulating exercise order affects muscular performance during a resistance exercise session. Journal of Strength & Conditioning Research. 1996.
  6. Hakkinen K, et al. Neuromuscular adaptation during strength training, aging, detraining and immobilization. Eur J Appl Physiol. 2000.
  7. 『究極のトレーニング』P158
  8. Nosaka K, et al. Muscle damage following repeated bouts of high force ecceentric exercise. Med Sci Sports Exerc. 1995.
  9. Nosaka K, et al. Muscle Damage in Resistance Training. International Journal of Sports and Health Science. 2003.
  10. Isometric torso rotation strength: Effect of training frequency on its development
  11. McHugh MP, et al. To stretch or not to stretch: the role of stretching in injury prevention and performance. Scand J Med Sci Sports. 2010.
  12. Nelson AG, et al. Acute muscle stretching inhibits muscle strength endurance performance. J Strength Cond Res. 2005.
  13. Herda TJ, et al. Acute effects of static versus dynamic stretching on isometric peak torque, electromyography, and mechanomyography of the biceps femoris muscle. J Strength Cond Res. 2008. 
  14. Rosenbaum, D. and E. M. Hennig. The influence of stretching and warm-up exercises on Achilles tendon reflex activity. Journal of Sport Sciences,. 1995.

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